神の花は「山茶花」か、な
福岡県北九州市小倉南区にある古神道の徳力神宮・神理教へ「茶花」献上の一文を寄稿した折、神の花と呼ばれるアガベ(和名・竜舌蘭)を知った。そして、NPO仲間に1文を送ると「神の花はアガベというより、蓮の花や榊(さかき)、茶の木の小さな花を想像しますが、やはり、屋敷の庭にさりげなく咲く、昔ながらの山茶花(サザンカ)の白い花が浮かびました」の返信が届いた。なるほど、山茶花か。まさに野生の花として、山の茶花とある。
そこに時を同じくして一般社団法人豊前国小笠原協会(福岡県みやこ町)が申請していた「茶花士(ちゃばなし)」の商標登録証(令和5年12月)が特許庁から届いた。
不思議な縁を持つ「茶花」である。そこで山茶花を調べると、サザンカはツバキ科ツバキ属で日本の固有種とされ、おもに九州、四国、沖縄、本州(山口県)などに分布とある。うがった見方をすれば、九州北部の旧豊前国中心の地が繫茂地といえなくもない。開花は10月以降、冬場に強い花である。白、赤、ピンクなど簡素で清らかな色合いを持つ花。特徴としてハチやカメムシなど多種多様な虫が、何故か集まる花でもあるようだ。園芸品種としてカンツバキ、ハルサザンカなどがある。花は、ツバキのようにポトリと落ちるのではなく、花弁が1枚、1枚散る、名残り惜しさを誘う花であるようだ。古からの句歌をみる。
山茶花の木間見せけり後の月 与謝蕪村
人いゆき日ゆき月ゆく門庭の山茶花の花もちりつくしたり 佐佐木信綱
国内の野生種から世界に広がった日本の「サザンカ」は、中国の「ボタン」、西洋の「バラ」に比する花として親しまれる。名の由来について考察する。平安時代以前から国内の野生種花の名を中国の書籍などから探し命名して来たようだ。ツバキに近いサザンカは「山茶」だった。ところがツバキが「春」に花が咲く「木」であることから「椿」とされた。しかし「山茶」はそのままだったが、江戸初期の園芸書に「山」と「茶」を逆さにした「茶山花」と記された。そこから「茶」を「サ」と読む「サザンカ」となったようだ。
とにかく山茶花は土着花として我が国土に咲き誇っている。考えて見れば野生花として濃緑葉の中、ポツ、ポツと赤、白などがあやどる垣根に人々は馴染んで来た。人に優しい花として山茶花はあったのだ。日本の神やどる花は、心癒す山茶花と言ってもいいようだ。
光畑浩治
2024年(R6)1月8日